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「持分の定めのある医療法人」と「持分の定めのない医療法人」

医療法人には社団医療法人と財団医療法人がありますが、このサイトでは、社団医療法人を前提としてご説明します。

まず、社団医療法人は、「持分の定めのある医療法人」と「持分の定めのない医療法人」に分かれます。

〔1〕持分の定めのある医療法人

 この医療法人は、金銭その他の資産の「出資」によって設立されます。

 そして、出資者は、出資割合に応じた持分を有します。

 その結果、退社や解散時には、持分に応じて払戻しを受けられます。

 例えば、Aさんが1,000万円、Bさんが500万円、Cさんが500万円出資し、資産2,000万円で医療法人をスタートしたところ、数年後に資産が6,000万円になった場合を考えましょう。

 この場合、資産6,000万円のうち、その50%(3,000万円)はAさんに、その25%(1,500万円)ずつがBさんとCさんに帰属します。

 このように、出資の場合、事業が成功すれば大きく増えて戻ってくるので、出資者にとって魅力的です。

 

 「持分の定めのある医療法人」は出資者にとってメリットの大きな医療法人と言えるでしょう。

 ただし、医療法の改正に伴って、平成19年4月1日以降は「持分の定めのある医療法人」は設立出来なくなりました。

 そして、平成19年3月31日以前に設立された「持分の定めのある医療法人」は、「当分の間存続を認める」という変則的な扱いとなりました。

 ”当分の間“がどの位の期間を指すのか、明らかになっていません。

 いずれにせよ、その期間(当分の間)が満了する前に、次に述べる「持分の定めのない医療法人」に移行しなければならないことは、心にとどめておいた方がいいでしょう。

 ちなみに、「持分の定めのある医療法人」は、数の上では医療法人の中で多数を占めています

 (参考)医療法人総数53,000法人中、40,186法人(75.8%)平成29年3月31日現在

 

〔2〕持分の定めのない医療法人

  この医療法人は、金銭その他の資産の「拠出」によって設立されるので、そもそも出資持分の概念はありません。

 したがって、解散時の残余財産は、国や地方公共団体等に帰属します。

 

 平成19年4月1日以降設立できる医療法人は、すべて「持分の定めのない医療法人」になりました。

 それと同時に、医療法人が優れた業績を上げて、その資産価値がどんなに向上しても、拠出した金銭や財産に相当する金銭しか戻ってこない基金制度が創設されました。

 例えば、前述の例、Aさんが1,000万円、Bさんが500万円、Cさんが500万円出資し、資産2,000万円で医療法人をスタートしたところ、数年後に資産が6,000万円になった後に解散した場合を考えてみましょう。

 この場合、Aさんは1,000万円の払戻ししか受けられず、BさんとCさんもそれぞれ500万円ずつ返してもらうことになります。

 その際、利息を付すことはできません。

 そして、残りの4,000万円は国や地方公共団体等に帰属します。

 

 なお、基金制度の採用は任意で、採用する場合には、基金の拠出者の権利に関する規定や、基金の返還の手続を定款に定める必要があります。

 ちなみに、「基金」とは、医療法人に拠出された金銭その他の財産であつて、医療法人と拠出者の合意の定めるところに従い返還義務を負うものをいいます。

 この基金の返還は、ある事業年度の純資産額が一定の基準を満たし、かつ定時総会の決議を経た場合に限り行うことができるので、医療法人が自由に行うことはできません。

 合わせて、基金を返還する場合には、返還する基金に相当する金額を代替基金として計上しなければなりません。

 そして、この代替基金は取り崩すことができません。

 前述したとおり、返還に際して、利息を付すことができないことも注意が必要です。

 

 なお、基金制度を採用しない場合には、寄附で資金を獲得するしかありません。

 

〔3〕まとめ

 平成19年の医療法の改正は、医療法人の非営利性を徹底しました。

 その結果、現在、設立できる医療法人は「持分の定めのない医療法人」だけです。 

 医療法人の非営利性については、また別の記事でお話したいと思います。

 

特定行政書士 今井 雅子

 

 

 

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